マクロスシリーズ

【マクロスダイナマイト7】小説と漫画で描かれる2つのダイナマイト7

みなさん、こんにちは。

今回は、OVA「マクロス ダイナマイト7」の小説版と漫画をご紹介します。

「マクロス ダイナマイト7」は、TV版の放映終了から2年後に完全新作として発売された全4話のOVAシリーズです。

バロータ戦役から1年後、Fire Bomberは絶大な人気を得ましたが、熱気バサラの心は沈んでいました。

一度山を動かしてしまったことにより、たぎり出す熱い思いを失ったバサラは1人、放浪の旅に出ます。

しかし、第67惑星空域の辺境の星ゾラに降り立ったバサラは、ある事件に巻き込まれ怪我を負います。

偶然居合わせた少女エルマに助けられたバサラは、彼女の父グラハムと銀河クジラの話を聞いたことで物語が進んでいきます。

小説版マクロスダイナマイト7

小説版は、全2巻。1999年と2000年に角川書店さんから出版されました。

作者は、飯野文彦さん。イラストは、美樹本晴彦さんと高山瑞穂さんです。

しかし、この表紙のミレーヌとエルマ。可愛すぎませんか?

この絵だけで表紙買いしてしまいます。

さて、OVA版では、いきなり何処かに旅立つバサラでしたが、小説版ではこの理由がちゃんと描かれます。

Fire Bomberと熱気バサラは、バロータ戦役の活躍から一躍銀河系規模のビックスターとなり人々は熱狂しました。

はじめのうちは熱い手応えを感じていたバサラだったが、ある時ふと考えます。

「おおぜいが熱狂している。しかし、本当に歌を聴いている者は、どれだけいるんだ⁉︎」

自分が魂を込めて歌っても、いくら心の叫びを叫んでも、一度狂い始めた自分の気持ちと観客とのギャップは離れていくばかりだったのです。

そしてバサラは、自分自身も自分の歌を歌っていないことに気づき、マクロス7船団を後にしました。

たどり着いた惑星ゾラでバサラは、ヒロインであるエルマ・ウイリー(OVAではホイリー)に出会います。

上巻は、ほぼOVA版に沿ってストーリーが進みます。

しかしながら下巻からは、小説版ならではの展開をみせます。

ストーリー的には同じなのですが、各エピソードに付随する背景が細かく描かれるため、OVA版では語られなかったキャラクター達の心情への理解が深まり、よりストーリーに入り込むことができます。

それが小説版のいいところなのですが、この小説はさらに白クジラの描写が加わることで、一際バサラの歌が「ダイナマイト7」の舞台上でいかに凄かったのかを感じられるのです。

銀河クジラの群れは、今までは惑星ゾラの周りを定期的に通り過ぎるだけであり、惑星ゾラのパトロール隊によって密猟団から守られていました。

それが、バサラの歌を聞いたことから、白クジラが自分の意志を表すようになり、パトロール隊を守るように密猟団を蹴散らすようになりました。

それまでクジラは植物性の細胞が炭化した珪素(けいそ)の固まりと考えられていたものが知的生命体であることがわかりました。

今回、バサラの歌を聞いたことによる白クジラの意志の発露は実は初めてではありませんでした。

エルマの父グラハム・ウイリーの妻であるマリア・ベラスケス・ウイリーがクジラの前で歌を歌った時も反応があったことがグラハムから語られます。

初めてクジラに心があることを感じとったグラハムは、クジラがマリアの歌声に嫉妬し、マリアの歌を自分のものにするため、また、孤独な自分と同じ境遇をマリアと共にいるグラハムに与えるため、マリアを襲ったと考えたのです。

そして、マリアの叫びに白クジラの叫びが加わったことにより、グラハムは、白クジラがもう2度と歌を聴けなくなるという絶望に近い後悔の念に襲われ、グラハムへの罪の償いとして、死を与えられるためにゾラへやってきていると考えます。

OVAでは流石にここまでの心理描写はありません。

単に妻の敵討ちだけでなく、白クジラが死にたがっていると考えていたグラハムの気持ちがこれでわかります。

さらにこの小説の凄いところは、バサラの歌の描写です。

「言葉は、熱い情熱の魂となって、宇宙に響き渡った。歌という形を借りているものの、それは極限の真理にさえ、触れているかもしれない。」

「プロトデビルンと対峙したときよりも、崇高に次元が昇華しているかのようだ。」

小説なのにまるで歌が聞こえてくるかのような錯覚を覚えます。

バサラを探しに来たガムリン・木崎ですら「バサラのやつ。いったい何があったんだ」というほどのすさまじいパワーが発揮されているのです。

小説版では、エルマ達家族にOVA版よりも一歩進んだエンディングが用意されています。それも楽しんでください。

漫画版マクロスダイナマイト7

漫画版マクロスダイナマイト7は、「マクロスダイナマイト7 ミレーヌビート」です。

こちらは、ミレーヌ・フレア・ジーナスを主人公にした漫画です。

作者は、小説版マクロスダイナマイト7でイラストを手がけた高山瑞穂さんで、1998年に角川書店さんから発売されました。

マクロス7船団に残されたミレーヌでしたが、OVAで語られた内容を再現しながらも、最後はパラレルストーリーとしてとんでもない展開になっています(笑)

ストーリーの展開に合わせてミレーヌの感情が浮き沈みするのが、非常に丁寧に描かれていて、1人の少女がアイドルとしての虚像と本来の自分との葛藤に悩む姿がいじらしいです。

個人的には、ガムリンが搭乗するVF-22Sの前脚がOVAと同じく2輪になっていたことが嬉しかったです。

等身大のミレーヌをみることができる漫画版マクロスダイナマイト7もオススメですよ。

それでは。