みなさん、こんにちは。
今回は、マクロスシリーズの魅力の一つ「板野サーカス」についてご紹介します。
板野サーカスとは?
みなさんは、マクロスシリーズをご覧になった時、画面を所狭しと行き交う大量のミサイルを見たことはありませんか?

グルグルと動くミサイル。どアップになったかと思うとあっという間に画面外へ消えていき、また画面外から飛び込んでくるなど高速で動き回り、敵に向かっていきます。
それが見ていて気持ちいいんですよね!
これが「超時空要塞マクロス」の頃から使われ、「板野サーカス」と呼ばれる描写になり、今でもマクロスの戦闘シーンでは欠かせない技法になっています。
当時のロボットアニメでは、ビームが主流でしたが、改めてミサイルの良さを教えてくれた描写です。
この描写を考案されたのが、「超時空要塞マクロス」や「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」でメカ作監をされた板野一郎さんです。

ミサイルが空中を舞う様子が、幾つもの空中ブランコが一斉に行われているような感覚で、見ている側の動体視力を試されるような。どこを見ればいいのかわからなくなる状態になることから名付けられたといいます。
最新作のマクロスΔでも、板野サーカスが出てくるとついつい目を凝らしてしまいます。
さて、この板野サーカス。どうやって生まれたか知っていますか?
伝説のエピソード
実は、花火なんです。
板野さんは、バイクが好きで高校時代には学校をサボって友人と遊びに行っていたそうです。
その時に、ロケット花火を大量に買い、バイクのフロント部分に八木アンテナでランチャーを作り、そこに左右50本ずつ入れられるようにしました。
しかも、ただ撃つだけでは面白くないので、ジャンケンをして勝った方が負けて逃げる側に向かって撃つという、良い子は絶対に真似したらいけない遊びをしていたそうです。
しかし、ロケット花火は全く相手に向かっていかずに、風に流されたりしていろんな方向に行ってしまいます。
そのうち撃つ方よりも追われる方が楽しくなって、バックミラーを見ながら自分を追い越していくロケット花火をみたり、風に流されて何処かに行ってしまう花火を楽しんでいたそうです。
そこから発想を得たのが「板野サーカス」だったのです。
板野サーカスのミサイル理論
板野サーカスのミサイルには意味があります。
まずは、通常のミサイルは真っ直ぐ相手に向かっていきます。しかしこのミサイルは、相手側のチャフやフレアで防がれてしまいます。
2つ目は、頭が良すぎる優等生ミサイルです。これは目標の機体性能と軌道を予測して先回りをするものです。
さらに頭がいいミサイル。これは確実に当たらなくてはいけないミサイル。
ただし、この優等生ミサイルとか頭がいいミサイルもマックスやミリアにはかわされてしまいます。

そこで最後に目立ちたがり屋のおバカミサイルです。必ずカメラの前に大きく飛び込んできて、ぐにゃぐにゃしながら当たらなくてもOKと飛んでいくミサイルです。これが動き回わることであのサーカスの表現になっています。
「板野サーカス」が初めて
「板野サーカス」という表現方法で1番大事なことは、カメラで被写体が追いきれないという表現を初めて使ったことです。

通常被写体がカメラから出てしまうとリテイク(撮り直し)になってしまいます。
板野さんは、バンバン動いた方が楽しいということで、被写体がこの速度で動いたらカメラで追えなくなってしまうものを、本当に追えないように描いた初めての方になります。
また、当時アニメーターは、ものを立体として捉えずに記号化された平面図を模写していたと宮武一貴さんが気づく中で、板野さんが初めて立体として動かしていたとおっしゃってました。(月刊ガンダムエース2012年6月号増刊「ニュータイプエースVol.9」特別付録②「DOCUMENT OF MACROSS No.002」)
美樹本晴彦さんも板野さんとの対談で「たぶん作画の視点「カメラ」の動きや画角を明解に意識したのは板野さんが最初なんじゃないかと思います。」とおっしゃってました。(月刊ガンダムエース2012年7月号増刊「ニュータイプエースVol.10」特別付録②「DOCUMENT OF MACROSS No.003」)
立体を立体と認識して、空間把握しながら画角を常に意識して作画できる能力。
これこそが「板野サーカス」と呼ばれる技術の真髄なのでしょう。
板野さんのマクロスに関する伝説はまだまだあります。
「マクロス」という作品を「生死をかけた荒行」と言っていますからね。
今後、少しずつでもご紹介できればと思います。
それでは。
