みなさん、こんにちは。
今回は、角川スニーカー文庫から発売された小太刀右京さんによる小説「マクロスフロンティア」をご紹介します。
2008年から刊行され全4巻となっています。

ストーリーは、TV版「マクロスF」をほぼ踏襲しています。
「じゃあ読まなくていいじゃん」となった方。
ちょっとお待ちを!
小説版の面白さはアニメや漫画では表現しきれない細やかな描写にあります。
登場人物1人ひとりにスポットを当てて、その人物をより深く掘り下げるのは小説ならではいえるでしょう。
「マクロスシリーズ」は、アニメや劇場版で流れた内容が正史ではなく、あくまで後世になって作られたものという立場をとっています。
なので、小説での設定もあったかもしれないという「if」の世界となります。
それでも、アニメで描かれなかった裏でこんなことが起こっていたのかとか、この時このキャラはこんなことを考えていたのかと思うとマクロスフロンティアの世界観が広がった感じがします。
例えば、物語冒頭で「娘々(にゃんにゃん)」でバイト中のランカ・リーがシェリル・ノームのコンサートチケットを手に入れて大喜びする場面では、ランカは店長から怖い顔で怒られます。
アニメでは怖い印象の店長ですが、小説では「そんな状態じゃ当日の仕事とてもムリね!ナナセ、ランカとシフト替わってやるヨロシ!」と理解のあるいい人物と描かれています。

また、S.M.Sに入隊した早乙女アルトは、シュミレーションで25回撃墜されて同僚のミハエル・ブランからしごかれていましたが、アニメではミシェルがシュミレーションの難易度を敢えてあげたとの表現がありました。
小説版では、シュミレーションのパイロットデータがイサム・ダイソンのデータとなっています。
そんなの誰も勝てませんって!ミシェル悪人だなぁ。
松浦ナナセは人の良さに拍車がかかっています。学校の課題をやっていなかったランカがナナセに助けを求めた時に、敢えて自分は用事があるフリをして、アルトにノートを見せてもらったらどうかとランカの背中を押してあげます。
ランカのことを思って嘘をついたのですが、その後一人で悲しんで涙を流すなどアニメよりも強くランカのことを思っていることがわかります。
実はランカに対するナナセの想いには、ナナセの秘められた過去にあったという衝撃的な展開も出てきます。ナナセファンの方にはかなりショッキングな出来事ですので注意してください。

ミシェルやクラン・クランの関係も過去の出来事の影響がより強く、丁寧に描かれています。
ミシェルがアルトと触れ合うことで昔のような笑顔を取り戻すことができるのではとアルトを頼りにしたり、ミシェルが両親の死のショックを受けていた時にアルトの歌舞伎を見て救われたとアルトに告げるなどキャラクターどうしの関係性も深くなっています。
その他、オズマ・リーがエリート部隊「ブラックエイセス」の新人として第117調査船団に同行している時に、グレイス・オコナーと知り合っていた話や、グレイス自身の苛立ちなどの感情の起伏もかなり丁寧に描かれています。
さらに、プレイステーション用ゲームソフト「マクロスVF-X2」の登場人物や事件を上手く噛み合わせて、バジュラ戦役におけるレオン三島たち黒幕の動きやS.M.Sオーナーのリチャード・ビルラーの思惑を多重的にみせています。
ラストのバジュラ母星での決戦では、熱気バサラやキム・キャビロフが登場するなど、怒涛の攻めを見せてくれます。

魅力的なキャラクターがおおぜい登場するマクロスフロンティアですが、小説では、さらに1人ひとりの背景を書くことによって深みを増すことができています。
マクロスフロンティアのファンの方は是非読んでみることをオススメします。
早乙女有人が演じた「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」がどういう内容なのかも分かりますよ。
それでは。